センター長挨拶

理研創立100周年を迎えて

センター長 小幡裕一 (理博)

センター長
小幡 裕一 (理博)

 理化学研究所は、1917年(大正6年)に財団法人として設立され、2017年に100周年を迎えました。1913年、明治時代の我が国を代表する科学者である高峰譲吉氏が「世界は理化学工業の時代になる。わが国も理化学工業によって国を興そうとするなら、基礎となる『純正理化学』の研究所を設立する必要がある」と提言しました。その実現にあたっては、明治の偉大な実業家の渋沢栄一氏が牽引的な役割を果たし、皇室からの御下賜金、政府からの補助金、民間からの寄付金を基に、長岡半太郎(原子物理)、鈴木梅太郎(化学)、本多光太郎(材料科学)等の14研究室で発足しました。また、女性の研究者を登用した我が国では最初の研究所でした。戦前には、理化学研究所の発明を事業化し、今で言うベンチャー企業を次々と設立し、「理研コンツェルン」を形成しました。終戦後、理研コンツェルンは解体されましたが、現在のリコーや理研ビタミンもそれらの会社の一つです。理化学研究所は財団法人として発足しましたが、運営形態は、株式会社科学研究所(1948年)、特殊法人理化学研究所(1958年)、独立行政法人理化学研究所(2003年)を経て、現在の国立研究開発法人(2015年)と変遷してきました。現在、理化学研究所は、情報・数理科学、物理、化学、生命科学、医科学の我が国最大・最高の研究機関として、基礎から応用までの最先端研究を実施するとともに、バイオリソース、放射光、スーパーコンピュータ等の世界最高水準の研究基盤を整備し、国内外の研究者へ利用機会を提供しています。

 2015年4月1日、国立研究開発法人へと移管した理化学研究所に松本紘理事長が就任しました。松本理事長は、理化学研究所が世界最高水準の成果を生み出す経営方針として、「科学力展開プラン」(http://www.riken.jp/about/plan/)を掲げました。バイオリソースセンターを含めて理化学研究所の全ての職員は、本プランの実現に全力を挙げています。

 バイオリソースセンターは、2001年に設立され、「信頼性」、「継続性」、「先導性」をモットーに、バイオリソースを収集・品質管理・保存・提供する事業を展開してきました。バイオリソースは、生物遺伝資源とも呼ばれ、基礎生物学、医学、薬学、農学等の生命科学研究には必要不可欠な研究材料です。また、健康増進、食料増産、エネルギー生産等の国民生活に直結した研究開発にも必要です。バイオリソースには様々な種類があります。当センターでは、我が国の研究開発にとって重要なバイオリソースである実験動物のマウス、実験植物のシロイヌナズナ・ミナトカモジグサ、ヒト及び動物細胞、微生物およびこれら由来の遺伝子に焦点を当てて、事業を展開しています。事業方針として、我が国で開発されたバイオリソースを中心とすることとし、世界でもオンリーワンのセンターを目指してきました。さらに、2002年に文部科学省が開始し、2015年からは日本医療研究開発機構が運営しているナショナルバイオリソースプロジェクトの中核的拠点として選定されており、他の24種類のバイオリソースの担当機関と連携して、プロジェクトを推進しています。15年を超える活動の結果、当センターはバイオリソースに関する国際的拠点として認知されています。これまで、18万件を超えるバイオリソースを国内延べ6,800機関、海外68ヶ国4,700機関に提供してきました。提供したバイオリソースの約10%は利用者の論文発表に、約1%は特許取得に貢献しています。

 2015年に大村智教授が「エバーメクチン」の発見で、2016年には大隅良典教授が「オートファジー」の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。我が国の生命科学研究の底力を示す証しであり、誇るべきものです。バイオリソースセンターには、大村、大隅両教授が開発に関与された様々なバイオリソース、また、山中伸弥教授が開発されたiPS細胞も寄託され、世界中に提供されています。これらを含め、我が国の研究者が開発した様々なバイオリソースが当センターに整備されているということは、当センターが研究コミュニティの支持と信頼を受けていることを示しています。当センターは、将来にわたり我が国のそして世界の研究基盤として活動し、ライフサイエンスの発展、そして人類の持続的発展に貢献することを目指します。そのためには、国民と研究コミュニティの継続的な理解と支援が必要です。今後とも宜しくお願い申し上げます。