篠崎連携研究グループ(機能開発研究グループ)

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篠崎連携研究グループ
(機能開発研究グループ)

ミッションと事業概要

ラボラトリーヘッド 篠崎 一雄 (理博)
ラボラトリーヘッド
篠崎 一雄 (理博)

  当グループは、モデル植物の変異体や完全長cDNAなどのリソース開発および変異体の形質評価系の開発を通じてバイオリソースセンターのリソース業務に貢献している。
また、収集したリソースを活用し、メタボロームやホルモノーム、プロテオームなどの網羅的解析によって得られた情報と統合することで、ストレス耐性などの植物の生産性に関わる有用因子の探索と機能解明を進めている。
さらに、得られた有用因子を作物育種やバイオマス増産に応用することで環境・食料問題に取り組んでいる。

平成28年度の成果

  1. 環境ストレス応答に関わる制御因子およびシグナル伝達因子の探索と解析
      本研究グループでは、温暖化、乾燥化の進む地球環境での安定した農業生産やバイオマス生産を目指し、環境ストレス応答に関連した遺伝子探索と機能解析を中心に以下の研究を行っている。

    • 乾燥ストレス下における植物ホルモンの蓄積量をホルモノームにより網羅的に解析した結果、アブシジン酸(ABA)が乾燥ストレス下でジャスモン酸合成の調節に関わることを明らかにした(Urano et al., in press)(図1)。
    • 環境応答制御に重要な役割を果たすABAに注目し、ABA生合成および分解に関わる酵素遺伝子の発現制御機構に関する研究を進めた。植物の変異体プールを用いた探索により、ABA合成に関わるNCED3遺伝子の乾燥誘導性に重要な役割を持つトランス因子を同定し、単離された候補因子の解析を進めた。
    • 異なる葉面蒸散量を示す二つの野生エコタイプに注目し、これらの交配F2集団を用いた解析から、葉面蒸散量の低下に関わるメジャーなQTL(量的形質座位)を発見し、原因遺伝子の探索を進めている。
  2. ストレス耐性遺伝子の作物への応用
      本研究グループではこれまでに、環境ストレス耐性獲得に関与する遺伝子を多く単離してきた。
    本研究では、これら有用遺伝子を利用して、ストレス耐性植物の実用化に向けた基盤整備を行っている。
    また、水利用効率向上を目指した植物評価系の開発を行っている。

    • 国際農林水産業研究センター、IRRI、CIAT、CIMMYT、EMBRAPAなど、国際的な農作物研究機関との共同研究により、環境ストレス耐性付与を示す有用遺伝子や、有用プロモーターをイネやコムギ、ダイズなどの作物品種に導入し、劣悪環境においても生育できるストレス耐性作物の開発を行っている。EMBRAPAとの共同研究において、シロイヌナズナのガラクチノール合成遺伝子を導入したダイズは、灌漑地、非灌漑地において収量が増加することを明らかにした(Honna et al., 2016)。また、ガラクチノール合成酵素GolS2を遺伝子導入したコロンビア陸稲系統Curingaと、アフリカ陸稲系統NERICAは、圃場試験において乾燥耐性を示し、収量の増加を示すことを明らかにした。
    • 植物の環境ストレス応答および水利用効率を詳細に解析するため、植物の水環境を精密にコントロールする装置を開発し、様々なカメラによる画像解析を活用した表現型解析システムの構築を進めた(図2)
    • 植物のストレスホルモンABA(アブシジン酸)の膜輸送体AtABCG25を過剰発現する植物を作製して表現型解析を行い、過剰発現体においては気孔におけるABAシグナルが活性化し、水利用効率が向上していることを明らかにした。

図2 植物自動育成観察システムRIPPS

図1 乾燥ストレス下の野生型シロイヌナズナ(WT)とABA合成遺伝子欠損変異体(nced3-2)における、ABAとJAレベルの変動